3回戦が終わり、次の4回戦まで控え場所で身体を休め息を整えます。
さすがに身体は疲れていますがスタミナは大丈夫そうです。
これまで走り込んできたことに意味があったことをこの時に初めて感じました。
控え場所まで応援に来てくれていた他道場の仲間と少しの間談笑をします。
本来であれば次の試合のために次の相手の試合を見るべきなのですが会話に夢中になっていたことと、ここまで勝ち上がることができた満足感からの気の緩みで次の相手の試合スタイルをしっかりと把握しておくことができませんでした。これは、今大会での反省点のひとつでもあります。
僅かな休息時間が終わり、あっという間に試合の時間がやってきました。
相手は強豪県の選手。
身長もかなり高く身長差は20cmほどありそうです。
試合前にコート外で向かい合いますが、胸についている県名のワッペンに威圧を受け緊張感が強烈に高まります。
立ち居振る舞いから、かなり長い年月空手に関わっている実力者の雰囲気を感じます。
この時点で頭の中に作戦などなく、とりあえず向かい合ってから考えようと心に決めました。
そして、いざ試合開始です。
審判の『勝負始め!』の声で向かい合った瞬間に感じてしまったのです。
『これは勝てない』
空手をやってきて初めて抱いた感覚でした。
昨年の大会では身長が高い準優勝者と試合をしたのですが、このような恐怖心を感じることはありませんでした。
しかし今回は相手の構えと雰囲気で恐怖を感じたのです。
その時点で勝負は決まっていたのだと思います。
これまで練習していたカウンタータイプの相手への入り方も全て頭から吹っ飛んで、相手ではなく恐怖心と戦っていました。
冷静さを失い『とにかく責めなくては』という思考だけになってしまい、恐怖心を振り払うように無理に前に出てみましたが前蹴りで動きを止められ間合いに入ることもできません。
一度間合いを開け仕切り直しをします。
この時点でも頭の中で入り方を決めることが出来ず、とりあえず足だけ間合いに入れ上段突きで相手に飛び込んでみましたが手を払われカウンターの上段突きを入れられ0-1となりました。
このときにもらった突きの衝撃が強く『やっぱ、無理だ』と、すでに心が折れかけていました。
心のざわつきが収まらないまま再び向かい合いますが、頭の中で自分自身に『どうする?』と問い掛けながら構えていると遠目の位置から刻み突きが飛んできてあっという間に0-2です。
全く活路を見出すことができず『勝ちたい』なんて気持ちは全て消え去ってしまいました。
情けない話ですが『とにかく早く試合が終わってほしい···』
そんな心情になっていたのです。
とてもとても時間が長く感じました。
恐怖心が取れぬまま間合いを遠目にキープしているとまたしても逆上段が飛んできて、顔に強い衝撃をもらいます。
この突きもなかなか強い当たりで反則となりましたが自分の心は完全に折れてしまいました。
『もう、入れない』
恐怖で体が動いてくれません。
とにかく試合が終わってほしい・・・それだけしか考えていませんでした。
でも下手な試合はしたくない。少しでもチャンスがあれば前に行かなければ・・・そんな思いを持ちながら相手と向かい合いますが、相手の蹴りの動きや手を払う仕草に怖さを感じて何もすることが出来ません。
『何をしたらいいんだろう・・・』
そんなことを考えていると相手の強烈な逆上段突きがメンホーに突き刺さりました。
この突きもメンホーのベルトが外れるほどの強さで本当に厳しい突きでした。
その後、何もできずに0-3で試合終了となりました。
今大会はクジ運にも助けられベスト8を掛けた試合まで進むことが出来ましたが、最後に全国大会入賞の壁の高さを痛感して大会を終えることとなったのです。
喜びと悔しさが入り混じった複雑な心境でしたが、一つ言えることは空手を始めて8年になりますがここまでよく頑張ってきたなということです。
空手を始めた頃は自分が全国大会で試合をするなんて夢物語でしたが、こんな自分でもここまでできるのだという自信を持つことができました。
そしてこの夢にはまだ先があり、もっと努力をしてもう1段階上に行きたいという気持ちが更に大きくなりました。
54歳目前の自分ですが、もう10年頑張ればチャンスはやってくるかもしれませんよね。
その日の為に、これからも修行に励んでいこうと思う今日この頃なのです。
よし!絶対入賞してやっからな!!!
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