中学校卒業式から4日後の月曜日、いよいよ妹の公立高校合格発表の日です。
13:00に学校の正面玄関に合格者の番号が貼り出されます。
一緒に行くために嫁が午後から休みを取って家で待機です。
貼り出される時間のちょっと前に行き、貼り出しを待ち構えまる人が多いと思いますが、我が家では妹が『どうせ落ちているから友達がいるときには見に行きたくない』と、人が少ないと思われる夕方に時間をずらして合格発表を見に行くことにしたのです。
そりゃそうですよね・・・
みんなが喜んでいる中で自分だけが落ちて悲しむ姿なんて見せたくないですから。
しかしわずかですが、小さな望みもあるのです。
それは例年よりもかなり倍率が低いこと。
たぶんこれまでの倍率の中で一番低い倍率になっていたと思います。
それが唯一の望み・・・
でもE判定だしな(笑)
親としては結果を見て妹が落ち込んでしまい、変に引きずってしまわないか・・・それだけが心配でした。
合格発表の13:00を過ぎます。
学校に行けばすぐに結果が分かるけれど、嫁は妹の『行こう』という言葉を待ちました。
この時間帯は嫁も気が気ではなかったと思います。
そして15:30を過ぎた頃『ママ、そろそろ行こうか』と妹が嫁に告げます。
行きの車の中で『どうせ見に行ったって意味ないし』と助手席でつぶやく妹に『いや、分からないよ~!!』
と嫁がその場を取り繕うように返しました。
家を出発し、15分ほどで合格発表である公立高校へ到着しました。
夕方近くだったので誰もいないと思いきや、意外にも同じ中学校の顔見知りを含め思っていた以上に合格発表の場に人がいました。
誰にも見つからないうちに静かに帰る予定でしたが、そうも行かない状況になってしまったのです。
『ママ、さっさと見て帰ろう・・・』と妹が嫁に伝えると、二人で人目を避ける様に正面玄関に向かいました。
妹は自分の受験番号などあるわけがないと、頭の中で”〇〇〇番”と暗記しているだけです。
気の乗らない妹と嫁が二人で合格発表の掲示を見ます・・・
先に言葉を発したのは嫁でした。
『あれ?番号あるんじゃない? ねぇ!番号あるよ!!! 〇〇〇番だよね!』
『え・・・???』
そこにはあるはずのない番号があったのです。
妹は『え?なんで番号あるんだ?受かったの私?』と喜ぶより、なぜそこに自分の番号があるのかが信じられないようです。
『私、本当に○○○番だっけ?』
今度は自分で暗記していた受験番号が、本当にその番号だったのかが不安になってきたようです。
嫁は『私も覚えているから間違いないよ!受かったんだよ!!!スゴイスゴイ!!』
そこに学校の友達が集まってきました。
『どうだった?受かった?』と聞かれた妹は『なんか受かったみたい』と大喜びする友達たちに流されるように歓喜の輪に入っていきました。
妹も大喜びしながら喜ぶ友達たちと一緒に写真を撮ります。
何枚も何枚も写真を撮りました。
まさか受かるとは思っていなかったので、嫁も喜ぶ心の準備が全くできておらず心の奥で『ホントにあの番号で良かったよね?』という一抹の不安を抱えながら妹の姿を眺めていました。
一通り写真撮影が終わり友達たちと別れます。
家に帰るために車に乗り込むと、妹が『本当にあの番号だっけ?』と真顔になりました。
何度も再確認される嫁も不安になってきて『家に行ってちゃんと受験票を見よう!間違いないから。』と不安そうな妹に伝えます。
嫁は受験番号を控えていかなかったことを後悔しながら、助手席で不安そうな表情の妹に『番号は間違ってないよ!』と不安を和らげながら帰路を急ぎます。
車が自宅に到着しました。
妹が駆け込むように自宅の玄関を開けリビングに置いてある受験番号を確認します・・・
『ママ!番号間違ってなかった!!私受かった!!!』
本当に合格したことを確認した妹が大号泣し、嫁と抱き合いました・・・
安心した嫁も力いっぱい妹を抱きしめ、頭を何度も何度も撫でてあげました。
妹は不登校を乗り越え、自分自身でチャレンジを決めた公立高校の合格を自らの力で手に入れたのです。
仕事中の自分にも電話が掛かってきました。
『パパ!合格したよ!!ホントに合格したよ!!!』と弾む声の妹が聞こえます。
『え?マジで⁉ホントに受かったの?』
正直、自分も受かるなんて思っていなかったので喜びよりも驚きのほうが大きかったのです。
『おめでとう!!ホント良かったね。後で美味しいもの食べに行こうネ!』と伝えると
『うん!!ありがと!!』と、心から喜んでいる声が返ってきました。
自分は妹が受かったことはもちろん嬉しかったのですが、それよりも妹が喜んでいることが嬉しかったような気がします。
久々に味わう高揚感。
会社で静かに喜びを噛みしめました。
その日は家でささやかなパーティーを開き、二人が新たに高校生となることをお祝いしました。
そこには嬉しそうな家族の笑顔がたくさんありました。
我が家の経験をした【不登校】がこの日、思い出に変わったのでした。
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