『学校に行きたくない・・・』
一度その思いが沸き上がってしまうと、自分自身では抑えることができませんでした。
頭の中で『なんとか学校に行かなくても良い方法がないか?』ということばかり考えていたような気がします。
親に話したら何とかなるのか?と漠然とは思っていましたが、そんなことを相談するのは恥ずかしいし親に心配を掛けさせてしまうことを考えると自分の中の選択肢に入れることはできませんでした。
ある朝起きた時『今日こそは学校を休みたい』というどうしようもないくらいの強い思いが沸き上がってきたのです。
それに対して自分が思いついたことは親に『お腹が痛い』と訴えることでした。
お腹が痛いと言えば学校を休ませてくれるはずという、子供ながらの思考です。
これまでは体調が悪くても自分から休ませてほしいと訴えたことなどなかったので、登校時間ギリギリまで様子を見られましたがその日は親も心配して直ぐに学校を休ませてくれました。
学校を休むことができると分かると、心の中の重しがスッと軽くなり安堵感に包まれたことを覚えています。
その日は自分の部屋でゆっくりしていました。
あの嫌な思いをする学校に行かなくても良い。
それだけで充分でした。
母親は働いていましたが仕事を休み、お昼ご飯を作ってくれたりして自分を心配してくれていました。
『まだ痛いけれど、だいぶ良くなってきた』なんて適当な嘘をついて、その日をやり過ごします。
しかし,そんな幸せな時間はあっという間に過ぎ去り、夕方が近づくにつれ明日の心配で頭がいっぱいになってくるのでした。
『明日も学校を休みたい・・・。しかしどうやって休む?』
夕方が過ぎ、夜がやってきます。
親に体調を聞かれると翌日の事を考え『やっぱり、まだちょっと痛い』と明日も休むことを匂わせておきます。
その日の夜中は翌日の心配から全く寝ることができませんでした。
イヤなことが近づいてくる時間の流れは早いもので、あっという間に朝がやってきます。
母親が部屋に起こしに来ました。
『お腹は大丈夫?』と聞かれ、全く痛くないけれども『まだ痛い』と答えるしか方法が見つかりません。
母親には『とりあえず学校に行って、お腹が痛かったら帰っておいで』と言われたと思います。
もしかしたら今日も休ませてくれるかも・・・という期待も虚しく、学校へ行かなければならないようです。
母親にそう言われたものの、自分の心の中では行くつもりはありませんでした。
とにかく何とか休まなくては・・・
頭の中はそれだけしか考えていません。
『どうしよう、どうしよう・・・』
追い詰められた自分は2階の自分の部屋から1階の居間に行く階段で『吐いたら親が心配してくれるかもしれない』と思い、夢中で口の中に何度も指を突っ込みました。
寝起きでは胃の中は空っぽなので何も出てきません。
それでも何度も指を突っ込みます。学校に行くことを考えると、その苦しさは我慢できました。
そしてやっと出てきたのは僅かな胃液だけです。
吐いたものをあえて階段に残し、母親に『吐いてしまったんだけど』と伝え吐いたものを見せましたが『とりあえず学校に行っておいで』という態度が変わることはありませんでした。
そうなるとどうすることもできず、朝御飯を食べずに着替えて学校に向かわざるを得ませんでした。
家を出たものの自分の中では学校に向かう気持ちは全くなく、学校へ向かう為に渡るはずの大きな道路の横断歩道を渡らずに、学校とは反対の方向へ歩き始めました。
初めて自分の意志で学校に行かないことを断行したのです。
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