スキー教室が終わり、以前にも増して元気に適応指導教室に通うようになった妹が、ある日嫁にこんな言葉を発しました。
『学校の先生に会ってみようかな・・・』
学校の先生とは、中学校の担任の先生の事です。
修学旅行に紛れ込んだ時に僅かな時間会ったことがあるだけで、まともに会ったことはありません。
それなのにそんな気持ちになったのは、幼馴染みの友達や同じ部活の友達から『お姉さんみたいで優しくてとても良い先生だよ』という話を聞いていたからなのです。
嫁も何度かお会いしたことがあり、とても若い先生で本当にお姉さん的な感じで印象の良い先生とのこと。
それにしても、まさか妹の口からこんな言葉を聞くとは思ってもいませんでした。
スキー教室をきっかけに、何かのスイッチが入ったように動き始めた妹。
このまま復学へと進んでいくのか?
一方姉はほぼ登校しない状態になってしまいました。
妹の行動に背を向ける様に全く動く気配はありません。
生活は完全に”昼夜逆転”、夜中に起きていて昼過ぎに起きるサイクルが続いています。
そんなある日、嫁のお母さんが妹を適応指導教室に送るために我が家に来ました。
すると、学校に行かず寝ている姉の事が気に入らなかったらしく、寝ていた姉を起こすと
いろいろと話した挙句『あんたには絶望した!!』と、親の自分達でも言ったことのない言葉を浴びせましたのです。
なんてことを言ってくれるのでしょう(笑)
いきなり起こされて『絶望した!』と言われた姉は訳が分からずに『なんか、おばあちゃんにメッチャ怒られた・・・』と呆然としていたそうです。
たぶん、妹がどんどん動き出しているのに何もしない姉におばあちゃんも腹が立ったのでしょう。
十分すぎるほど気持ちは分かりますが、それは言っちゃダメなやつですよ・・・ね。
この件では何も起きなかったので良かったのですが、一歩間違えれば致命傷になったかもしれない怖い出来事でした。
我が家の場合、自分と嫁は長男が不登校の時から鍛えられた?お陰で、昼夜逆転に関しては本人が自らの意思で動き始めると何も言わなくても改善することを経験していたので、それほど心配していませんでした。
不登校初期の何もわからないときには子供の昼夜逆転を直そうとして毎朝定時に声を掛ける・朝にはカーテンを開けて日光を入れる・ネットの時間制限をする⇒守らないので時間になったらルーターを強制的に切断する・日中に外に連れていって体力を消耗させる・・・とにかく考え付くものをありとあらゆる方法でやってみましたが、親の思い通りになることは一度もありませんでした。
そのなかでもいちばんやってはいけなかったことはネット環境の制限だったと思います。
夜中に長男が取り憑かれたように『ネットが繋がらない!』とルーターを直そうとする姿を見て、怖ささえ覚えました。
当然ですよね。唯一の心の拠り所を奪われるのですから。
今思うと悪いことをしてしまったな・・・という思いしかありません。
このような経験をしていたので妹や姉が昼夜逆転の生活になっても、我が家では特に直そうと努力することはありませんでした。
これらを経験して分かったことは『子供は親の思い通りにはならない』ということです。
自分の子供といっても考え方は全く違う他人なのですから当然と言えば当然です。
それを『子供の為・・・』などという、いかにもな理由や親のエゴで決めることはできない・・・というか、してはならないと自分は思います。
それに気付いてからは親は親、子供は子供という考え方になり子供の考えに対して大らかになりました。
ただしそれは放っておくとか子供に丸投げするというわけではなく、必要な情報を与えたりアドバイスはするけれども最終決定は子供本人に任せるということです。
子供が昼夜逆転生活しようとも、学校に行かないことを選んだとしてもそれは子供が自分で選んだ『意思』なのです。
子供が選んだことに対し、支えてあげたりアドバイスしてあげるのが親の最大の役目なのだと思います。
あっ・・・なんか話が逸れてしまいましたが、担任に会ってみようかな?と言っていた妹の話しに戻ります。
嫁が先生と段取りをつけて、学校の授業が終わった後に二人で学校の先生を訪ねて行くということになりました。
妹がとうとう一線を越えて中学校に向かうのです。
そして、約束の日がやってきました。
約束の時間よりも早く学校に着いた二人でしたが、妹は家を出発するときの明るさが消え、時間が近づくにつれて徐々に表情が固まっていったのです。
そしてとうとう泣き出してしまいました。
『やっぱり学校には入れない・・・』
先生に会いに行きたい気持ちがあるのに、心と体が言うことを聞いてくれないのです。
妹の気持ちが落ち着くのをしばらく待っていた嫁でしたが、今日は無理だと判断し先生に電話を入れました。
『頑張って学校の前まで来たのですが、やはりハードルが高く今日は無理のようです・・・すみません。』と伝えたところ、先生が『それでは私がそちらに向かってみます。』と言って、二人の乗る車まで来てくれたのです。
そして車越しですが、先生と会えることができたのです。
先生は『○○ちゃん、よく来てくれたね。先生も会いたかったよ!体調はどう?』と笑顔で話しかけてくれたそうです。
妹は緊張の面持ちながら、先生と少しだけ会話をすることができました。
学校に入ることはできなかったのですが、先生と会うという目的は達成することができたのです。
そして頑張ったご褒美として美味しいパンケーキを二人で食べに行き、とびきりの笑顔で妹はパンケーキを美味しそうに食べたのでした。
この時の事を嫁に聞くと『学校に入ることはできなかったけど、先生に会うことを自分で決めて実際に会うことができたことで、本人はすごい自信を持った』と言います。
高いハードルを自分の足で乗り越えることができた自信なのでしょう。
また大きな一歩を自分の足で踏み出したのです。
時は2月の初旬・・・中学3年の始業式まであと2カ月の出来事でした。
【不登校】『学校の先生に会ってみようかな』
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